台風第10号は、7日夜から8日にかけて関東甲信地方に接近するおそれがありますので注意が必要です。台風中心の最大風速は20メートル(最大瞬間風速は30メートル)、台風が接近する前から雨が降り始め、8日は台風の進路や発達の程度によっては警報級の大雨となるおそれがあります。今後の気象情報にも注視してください。
以下の対策を行い、農作物等への被害防止に向けた対策を実施しましょう。
●対策
1.作物共通
(1)事前の対策
・ 圃場から速やかに排水ができるよう、明渠の清掃、補修を行う。
・ 収穫物の保管場所の浸水被害が想定される場合は、安全な場所へ移動しておく。
・ 暴風雨等の最中の行動は危険なので、圃場、施設の見回りは行わない。
(2)通過後の対策
・ 暴風雨等が過ぎた後においても、増水した水路等の危険な場所には近づかず、また足下等の安全に注意して行動する。
・ 圃場、施設からの速やかな排水に努める。必要に応じ排水ポンプを利用する。
・ 台風の進路によっては、フェーン現象により高温となることがある。暑熱下で作業せざるを得ない場合は、長時間の作業はせず、こまめに休憩を取り、水分や塩分を補給して、熱中症を予防する。
・ 病虫害を受けやすくなることから、適期防除に努める。
・ 肥料が流亡した場合は、土壌分析を実施し、適正量を施用する。
・ 作物の被害が著しい場合、他作物への転換も検討する。
2.園芸施設
(1)事前の対策
・ ハウス周辺の排水溝や、ハウスの谷樋、縦樋を清掃しておく。
・ 飛来物による損傷を防ぐため、ハウス周辺の片付けを行う。
・ 燃料タンクやガスボンベ等をしっかりと固定する。
・ 被覆材の破損や剥離、出入口の破損等で風が吹き込み、ハウスが破損するのを防ぐため、被覆材の破れ、ハウスバンドや被覆材の取り付け金具の緩みを点検し、必要な補修、調整を行う。
・ ボルトやブレースを点検し、緩んでいれば締め直す。
・ 停電に備え、手動換気やカーテンの手動開閉等の作業内容の手順を確認しておく。
・ 台風襲来直前には、出入り口を密閉し、換気扇を稼働させてハウス内を減圧する。
・ 強風で倒壊する危険がある場合は、被覆材を除去する。
(2)通過後の対策
・ 開口部を開放して換気を行う。
・ 冠水した場合は、排水ポンプを用いるなどして、速やかに排水する。
・ 農業用施設や機械が冠水した場合は、通電前にメーカーによる点検を受けるなど、漏電やショートに留意した対応を行う。
・ 潮風害を受けた場合は、速やかに散水して除塩する。
3.野菜
(1)事前の対策
・ 強風害・潮風害のおそれのある場合には、べたがけ資材、寒冷紗等で被覆する。
・ 支柱やネット、誘引紐を点検して確実に固定し、必要に応じて補強する。
・ 露地の果菜類では、不要な茎葉を摘除して風の影響を抑え、また収穫できる実は全て収穫しておく。
(2)通過後の対策
【トマト・アールスメロン・ピーマン・パプリカ】
・ 作物が倒伏した場合は、速やかに誘引し直し草勢の回復を図る。
・ 施設内に雨水が浸水した場合は、直ちにハウス内外の排水を図るとともに、換気を行って湿度の低下に努める。
・ 浸水した場合、根が弱るので、液肥の葉面散布を行い、草勢の回復を図る。
・ 強風による茎葉の損傷や、ハウスを閉め切り高湿度状態が続くと病気が発生しやくなるため、殺菌剤を散布する。
【イチゴ】
・ 施設内に雨水が浸水した場合は、直ちにハウス内外の排水を図るとともに、換気を行って湿度の低下に努める。また、炭そ病予防のため、殺菌剤を散布する。
・ 草勢の回復を図るため葉面散布を行う。
・ 台風通過後の急な日差しによる葉焼けやしおれに注意する。
【軟弱野菜(ミズナ、ホウレンソウ、コマツナ、パセリ等)】
・ 施設内が浸水した場合は、直ちにハウス内外の排水を図るとともに、換気を行って湿度の低下に努める
・ 浸水した場合、根が弱るので、液肥の葉面散布を行い草勢の回復を図る。
・ 強風による茎葉の損傷や、ハウスを閉め切り高湿度状態が続くと病気が発生しやすくなるため、殺菌剤を散布する(べと病、白さび病)。
・ 台風通過後の急な日差しによるしおれや葉焼けに注意し、必要に応じて遮光ネットで光線を抑制する。。
・ 出荷時は、傷んだ茎葉はていねいにとり除き、出荷後の腐敗やトロケを防止する。
【露地野菜】
・ 茎葉に付着した泥を洗い流し、損傷した茎葉を摘除する。
・ 土寄せ、追肥、液肥の葉面散布等により、発根、草勢の回復を図る。
・ マルチ栽培においては、マルチをめくって土壌を乾燥させる。
・ ネギは特に湿害を受けやすいので、明渠により排水に努める。倒伏した場合は直ちに株を起こすが、土寄せは新葉の伸びを確認してから行う。
・ 病害虫、特に細菌病の発生が懸念されるため、防除に努める。
4.花き
(1)事前の対策
・ 露地においては、倒伏による曲がり等が発生しやすいので、支柱・フラワーネットの点検、補強、または土寄せ等を行う。
・ 収穫可能な花は全て収穫する。
(2)通過後の対策
・ 露地切花等で倒伏したものは、速やかに起こし、茎の曲がりを極力抑える(長時間置くと曲りが回復しなくなる)。また、折損した葉、茎葉は摘除し、下葉についた泥などはきれいな水で洗い流す。
・ 強日射による萎凋が予想される場合には、寒冷紗を被覆する。
・ 病害虫予防や草勢回復のため、必要に応じ、薬剤や液肥の散布を行うが、薬害に注意する。高温、強日射下では控える。
・ 露地切花等で出荷するものについては、選別を徹底する。
5.果樹
(1)事前の対策
・ ネットや果樹棚支柱を点検し、補修、補強を行う。
・ 棚栽培では、風による上下動を抑えるため、棚面の随所に支柱による突き上げと針金による下方への誘引を行う。
・ 立木栽培では、しっかりとした支柱を立てて結束し、枝折れや倒伏を防止する。
・ ビニルハウスでは、ビニルの緩みや破れ、隙間の点検、補修を行う。
・ 簡易被覆ハウス(トンネル)では、強風により破損する可能性が高い時は、被覆の除去を検討する。
・ 収穫可能な果実はできる限り収穫する。但し薬剤散布から収穫までの経過日数に注意する。
(2)通過後の対策
・ 折損した枝の修復や被害果の摘除、剪定及び摘果を実施し、生育の回復に努める。
・ 倒伏した場合は、速やかに引き起こし、根元がぐらつかないように支柱で固定する。断根、落葉などで衰弱している場合には、摘果等により樹体回復を優先させる。
・ 主幹・主枝の折れなど回復できないものは、腐らん病等の病巣となるので、切断してペースト剤を塗布する。軽度なものは、ペースト剤を塗布して補強し、翌年の生産に役立てる。
・ 潮風を受けた場合は、スピードスプレーヤ―等を活用し、塩分を洗い流す。
6.水稲
(1)事前の対策
・ 排水路の詰まり等がないか点検する。
・ 水田では、大雨の前に十分減水したうえで、一定量以上の水かさになると落水する対策を講じる。
(2)通過後の対策
・ 冠水時には排水路等を通じて速やかな排水に努める。排水不十分な場合でも、葉先が水面上に出ることで被害は軽減される。
・ 白葉枯病等の発生動向に留意し、的確な防除に努める。
・ 冠水被害を受けた稲体は水分調節や肥料吸収等の機能が低下すること、出穂期や登熟期におけるフェーン現象は白穂の発生、登熟不良等を引き起こすことから、根の活力を保つよう水管理を徹底し、応急的な通水で水分の補給に努める。
・ 倒伏や潮風害が起きた場合には、未熟粒や穂発芽等が発生し、品質低下が懸念されるため、適期収穫に努めるとともに、被害籾は仕分けして乾燥・調製を行う
(その他参考資料)
○「茨城県農業用ハウス災害被害防止マニュアル(茨城県HP)」
○「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリストと農業版BCP(農林水産省HP)」